変形性関節症やスポーツの怪我に対する再生医療(PRP治療)
『ヒアルロン酸注射が効かない、でも手術はしたくない。』
『スポーツで怪我をしてしまった。なるべく早く治して復帰したい。』
そのような患者様に、当院で行っている再生医療『PRP治療』を紹介させて頂きます。
1.PRPとは
私たちの血液には、赤血球や白血球、血小板と呼ばれる成分が含まれ、それぞれに役割があります。血小板は、皮膚が傷ついた時や捻挫、打撲などのけがをした時に、傷ついた場所を治すはたらきがあります。また血小板に含まれる、傷んだ体の組織を治す物質は成長因子と呼ばれます。
PRPとは、Platelet Rich Plasmaの略で、多血小板血漿のことです。多血小板血漿とは、血液中の血小板を濃縮して活性化したもので成長因子が多く含まれます。傷の治りを促進する成長因子が多く含まれるPRPは、私たちがもっている治癒能力や組織の修復能力、再生能力を引き出すと考えられています。
2.PRP治療について

PRP療法とは、患者様の血液から特殊な技術を用いてPRPを抽出して、痛みのある関節などの体の傷んだ部分に注射する治療法のことです。PRPは成長因子をたくさん含んでいるので、注射した部分の治癒が促進されたり、痛みが軽減される効果を期待できます。
PRP治療は、他の治療法に比べて自分自身の血液を使用するので副作用がなく安全で、体への負担も少ないことが特徴です。
他の治療法で効果が見られなかった場合にも早期の治癒や痛みの軽減を期待できることがあります。
3. PRP治療の適応疾患
- 変形性関節症(加齢に伴い軟骨が変性し、摩耗する疾患)
- 筋・腱の損傷:肉離れ、靭帯断裂
- 筋・腱の炎症疾患:上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、ジャンパー膝など
また近年では骨折部位への投与により、治療期間が短縮される事が報告されています。
4.PRP治療の効果と持続時間
PRP治療は、自分自身の治癒能力を引き出す治療法なので従来の痛み止めの内服などで症状が良くならなかった患者様でも効果を期待できます。また従来の治療では治りづらい靭帯の損傷や筋肉の損傷を治すことが可能になります。
PRP治療後は適切なリハビリテーションを行う事でさらに効果を高める事が可能です。
PRP治療の有効性(関節内)
膝関節に対してヒアルロン酸注射は30%程度が有効とされているのに対して、PRP療法は50%~75%の患者様に効果があると報告されています。
また、変形性膝関節症に対してヒアルロン酸の注入が行われることがありますが、ヒアルロン酸は関節内から3日で消失します。一方でPRP療法は、3回の治療で約12ヵ月間以上効果が持続すると報告されています。
PRP治療の有効性(関節内)
- 肘内側靭帯断裂(近位部断裂):60~90%が治癒(断裂形態による)
- 肉離れ:治療期間を40%短縮、治りづらいハムストリング肉離れの治癒率向上
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘):1か月で52%、6か月で82%の疼痛が消失
ただし、治療の効果や効果の持続期間には個人差があります。
5. PRP治療の手順
- 患者様の血液を15ml程採取します。
- 血液を遠心分離機にかけ、PRPを作成します(10分程)
- PRPを注射器で患部に注射します。
1回目の投与で効果が確認できた場合のみ、患者様のご希望を勘案し再度の投与を行います。膝関節には原則3回、他の関節には1~2回の投与を行います。また靭帯には原則2回、肉離れには1~2回の投与を行います。
6. PRP治療の適応基準
PRP治療を安全に行うには、いくつかの適応基準があります。具体的には、重篤な合併症がなく全身状態が良好である、貧血の所見がない、などが挙げられます。
また、がんの治療中の方や感染症がある方、発熱のある方、薬剤過敏症のある方、免疫抑制剤や抗血小板薬を内服中の方などにはPRP治療を行うことができません。
7. PRP治療の費用
PRP治療は保険が適応されない自由診療であり、全額が自己負担となります。
当院での費用は以下の通りです。
8. PRP治療の注意点
- 注射後1週間位の間は、細胞の活発な代謝が行われますので、腫れやかゆみ、赤みや痛みが出るなどがありますが、自然に消失していきます。
- 痛みを強く感じている間に、安静にし過ぎてしまうと、治療部位が硬くなり長期的な痛みの元になる可能性があります。指示されたリハビリテーションを行うことが大切です。
- 投与後、数日間は血流の良くなる活動(長時間の入浴、サウナ、運動、飲酒など)を行うことで、治療に伴う痛みが強くなることがあります。ただし、この痛みが強くなったからと言って、治療効果に差はありません。
- 痛み止めはPRPの効果を弱くする場合がある為、痛み止めの内服及び外用(湿布薬など)は投与の前後2週間程度は休止して下さい。
- 血液中の脂肪が多いとPRPの作成が困難となる場合があります。PRP治療を行う前日は脂肪の多い食事は避けるようにして下さい。